ダイヤル回線とプッシュ回線という言葉をよく耳にします。
ダイヤル回線と言えば、昔のダイヤル式のいわゆる黒電話を想像しがちです。
丸い数字番がついた回転式のダイヤルで、数字に対応した穴の空いた数字盤を指で回してダイヤルするというあれです。
また、プッシュ回線と言えば、携帯電話と同じように数字のついたボタンを押してダイヤルする押しボタン式の電話機を思い浮かべます。
そして、「うちの電話はプッシュ式の電話機だからプッシュ回線だろう・・・」と思ってしまいがちです。
しかし、プッシュ式の電話機が、必ずしもプッシュ回線というわけではありません。
回転ダイヤル式の電話機はダイヤル回線しか使えませんが、プッシュ式の電話機の場合は、「ダイヤル回線」と「プッシュ回線」のどちらを使用するか、加入電話の契約時に選択する必要があります。
このようにダイヤル回線とプッシュ回線の違いは、電話機本体の形状の違いではなく、実は、ダイヤルした電話番号を電話交換機まで伝える方法の違いなのです。
自宅の電話機と電話局にある電話交換機を結ぶ電話線の中には銅線が入っています。
その銅線の中には常に電流が流れていて、受話器のマイクに発した声の振動は銅線の中の電子を振動(往復運動)させ交換機を経由して相手の受話器のスピーカーに伝わります。
1秒間に電子が往復する回数のことを「周波数」(Hz)と呼びます。
プッシュ回線は、相手の電話番号をダイヤルする際、0~9の数字を10種類の異なる周波数の音に対応付けて、数字を音として送ります。
そして、0~9までの数字に対する10種類の音は、合計7つある音程の内、2つの音程を組み合わせて作っています。
例えば、「0」の場合は、941Hzと1336Hzの2つの周波数の音程を組み合わせて作られています。
この「音」を電話交換機が読み取り、番号を認識します。
これに対し、ダイヤル回線では、数字を音で表すのではなく、「瞬断」の回数で表現します。
上述しましたように、電話線には電流が流れており、電話機の受話器の上げ下げでスイッチが入ったり切れたりするようになっています。
ダイヤル回線では、ダイヤルした数字の数だけ、そのスイッチを機械的に瞬断させます。
つまり、「3」をダイヤルした時、スイッチを3回短く切るのです。
最近は見かけなくなってきましたが、昔の回転ダイヤル式のいわゆる黒電話を使った人なら経験があるかと思いますが、回転式のダイヤルを回した時、その回転盤が元の位置に戻るまで、「カチカチ・・」というような断続音が聞こえます。
これが瞬断させている時の音なのです。
この瞬断は「パルス」と呼ばれ、電話交換機はこのパルスを読み取って、数字を認識します。
見た目にはプッシュ式の電話機であっても、ダイヤル回線で契約している場合は、機械的にこのパルスを発生させ交換機に伝えますので、そのパルスの回数分だけ時間がかかってしまうことになります。
一方、プッシュ回線では、音で伝えますので、「ピッ、ポッ、パッ」と言われるように、電話番号をダイヤル回線に比べ短時間で伝えることができますし、ダイヤル回線では使えない、「*」や「#」といったボタンを使って、いろいろなサービスにも対応できるというメリットがあります。